しらせ最後の体験航海その2

砕氷艦(南極観測船)しらせ飛行甲板上の

18日に行われた、南極観測船こと海上自衛隊所属の砕氷艦AGB5002しらせちゃんの、最後の体験航海のレポ(その2)です。(その1は昨日の日記に書いてます)


さて、しらせちゃん搭載のヘリコプター「カラスちゃん」ことS−61Aの86号機&87号機ちゃんの発艦ですが、その前に一応、カラスちゃんのウンチクを。


カラスちゃんというのは、機体の基本色がカラスっぽい(確かエンジングレーとかいう色です)からそう呼ばれるようになったらしいですが。非常に呼びやすく愛着も持ちやすい呼称でイイですよね。好き♪
現在は85・86・87号機の3機が館山基地に所属しており(館山以外にはいない機種です)、先月の部隊改編の前までは海上自衛隊21航空群館山基地隷下の101航空隊の所属。
っつか、でも「しらせ飛行科」の所属ってのが正しいのかな。テールに書かれた機番の上の所属コードは、101ではなく「シラセ」となってるしw
カラスちゃんの南極での主な任務は「春告げ鳥(極地の人たちに向かえが来たことを知らせるw)」・・・も、そうだけど。しらせと基地の間の輸送業務らしいんですが(真っ白な南極にあって目立つようにあの色合いなんだそうです)、そのために積載可能な量は多いらしいし、ロードマスターさんも乗り込むんだそうです。
それ以外・・・オフシーズン(?)は、訓練の他に、救難機としての任務も持ち合わせているようで、昨夏には近くの海水浴場で流された人を救助した経験もあるし。一昨年だったか、集中豪雨でバスの屋根に人が残されたことで有名になった舞鶴での災害にも出動したりしてました。


そんなカラスちゃんも、もう今回の航海から帰ったら主要業務は終了と言うことで、この夏に退役(&用廃)されることが決まっており、もしかしたら訓練や緊急出動で動くことはあるかもですが、原則として今回の体験航海から母港(とは言わないかw)の館山基地に戻るのが、最後の発艦になるということで。
そして実は私にとって、ナマでしらせちゃんから飛び立つカラスちゃんを見るのは、これが最初で最後。
それを考えると今回、館山の基地モニタになって・・・非常に得をしたというか、意義のある事となりまして、心底ラッキーでした。


昨日の日記に書きましたが、当初、天気が悪かったので、このまま発艦しないんじゃないかとか、天候回復後も格納庫のシャッターのトラブルで、やはり危機感を抱いたりもしてたんですが。
これには乗員さんたち「カラスもしらせから離れるの嫌がってて、しらせもカラスが去っていくの名残を惜しんでの事じゃないのか」なんて言ってましたが。
館山基地では、最後の大仕事を終わらせて帰ってくるカラスちゃんたちを労うべく、式典の用意をして待ってるし。
しらせちゃんの上には、最後の雄姿(?)を記憶や記録に残そうと、目を輝かせ胸をはずませてる私たちがいてるし。
しらせちゃん自身、横須賀に帰れば「お帰りなさい&お疲れ様でした」のセレモニーがあるらしく、その会場となる格納庫は空いていないと不都合が生じるらしい。
そんなこんななので、やっぱりどんだけ名残惜しくても飛び立ってもらわなきゃ困るので、結局、柱の修理はあきらめて、1機目を引っ張り出した後、空いた格納庫内で細かく何度も切り返しを行ってから2機目にも出てもらうという形となりました。


DDやDDH等の護衛艦に慣れている方ならご存知かとは思いますが。
ヘリの運用&格納能力を持つフネのほとんどには「ベアトラップ」と呼ばれる、ヘリの拘束装置があって、これ使って強制着艦もできるし、これを甲板に設置されてるレールを伝わすことによって軽々と機体の出し入れ(?)を行うことができるらしいのですが、しらせちゃんにはそんな装備はないので、人が押したり曳いたりして動かすんですよ。
一応、簡易フォークリフトみたいなタイヤを挟んで引っ張る機械みたいなのもあるけど、艦上ではその機械を人が引っ張るわけだし。
横須賀から広報のお手伝いに来ていた整備士さんの話では8人がかりで動かすのが正規のルールらしいのですが、実際には3人くらいで動かせると、しらせの「中の人」が説明してましたwww


さて、いよいよ本題(前フリ長いよ!)。
まず左舷側に駐機されていた86号機ちゃんが発艦します。
艦尾付近にある「ヘリ着艦標識(と言うらしいが、正式な名称や愛称は不明。ご存知の方いらしたら教えていただけると嬉しいです)」まで引っ張り出された時点では、5枚のメインローター(上にくっついてる羽根)はたたまれていて、3枚は機体中央・後ろに流すように留められ、残ったもう2枚はそれぞれ機体の左右に流し下のほうに留め置かれていて・・・ちょっと可愛いのです。
今日は発艦があるので尻尾はすでに伸ばされていましたが、普段の格納中は、尻尾も途中で折りたたまれ、省スペースになるようにできてるんだそうです(ちなみに、SH−60JとかKとか。その前の世代でカラスのベースにもなってるHSS−2Bなんかも同じような仕組みです。60は4枚羽根だけどね。なので、遠目にはウサギが休んでるように見えますw)。・・・そんなギミックがたまらないですw


まずは搭乗員さんが乗り込み、中でいろいろ準備。
機体の外・・・格納庫のすぐ手前の辺りでは、旗を持った兄さんが立っており、パイロットさんは機内から白い手袋をつけた手を使って、この兄さんはヘリ甲板から手にした旗を使って「手先信号(手旗信号とはまた違う、航空機用の信号らしいです)」という信号でやりとりを交わします。
外では艦内からのびた電源ケーブル(?)を繋ぎ、消防担当と思われる人も何やら待機。
そういや、陸上でも赤と緑のタンクを機体に侍らしてるけど・・・あれって何だろう? 気にしたことはあるっちゃあるけど、マジメに調べようとしたことはないなぁ・・・これも詳しい方いらっしゃったら、わかりやすく教えていただけると嬉しいです。
機体後部では、ハッチを開けて中の人が顔を出したりしまったり・・・いろいろ細々作業をしていて、そのうち、ホイストケーブルを引っ張り出したり戻したりの確認作業も始めました。
以前に何度か、護衛艦(や輸送艦)に発着するSH(JもKも)を見たことがあるのですが・・・それらはこんなチェックはやってなかったなぁ・・・と、ちょっと不思議な気持ちで見てましたが。
続く87号機でも同じチェックやってたので・・・きっとこれ、レギュラー作業なんだろうなぁ、とも。
そうこうしているうちにエンジン起動。


羽根を広げたカラスちゃんは、さっきまでとちょっと雰囲気が違って見えて、SH−60Jなんかよりは格段に大きく見えるんですがw
色味の存在感もあるのかな。
ローター回り始めると、さらに雰囲気が変わり、カラスちゃんは立派な飛行機(回転翼というジャンルになり、一般的なヒコーキは固定翼というジャンルになるそうで。この用語を知ってるとマニア呼ばわりしてもらうことができたりしますw ちなみにF−14トムキャットちゃんは可変翼というジャンルになります。マクロス好きなら可変翼好きに違いないと思い込んでますw)、生きた乗り物なんだなぁという実感が持てます。
おそらく、勝手に動いちゃわないようにロックするのが目的なんだと思うんですが、ローターが回り始めてもまだ機体はゴツい鎖で甲板につながれています。
そんな中でPさんはローターの角度を変えたりするテストも行っているようで、ブレードを支える軸を注視してると、それがわかるし、機体が一瞬ふわっと言ったり、モゾモゾと向きが変わったりするのが楽しめます。


そしてそれらが落ち着くと、機体と甲板を繋ぐ鎖がはずされ、旗を持った兄さん以外のほとんどの人がいなくなり・・・みんなの視線と期待が集中する中・・・発艦!
ローターの風きり音が変わった瞬間に黒い気体はふわりと浮かびあがり、機種を上向きに・尻尾が下がった状態で少しずつしかし確実に上昇していく。
今まさに、カラスちゃんが飛び立ったのです!


めっちゃくちゃ感動と興奮をする私(&おそらくその場にいた全員)!
風はそこそこあったけど、雨も時々霧雨みたいなのが降ったりやんだりしてたけど・・・南極で鍛えたカラスちゃんにはきっと大したことないに違いない!
まるで自分が育てたヒナ(本当ならもう老齢もいいトコなんだろうけどさw)が巣立って行くのを見守る母鳥のような気持ちになりながらも、必死にシャッターを切る私(&おそらくその場にいた多くの人たち)。
そして、その一瞬後には母鳥の気持ちは忘れて、ただのカメラ小僧と化した私は・・・もっといいアングルで飛べと心で叫び続け、その期待に応えるようにゆっくりとしらせ脇を飛んでいく86号機ちゃん。
・・・でもまぁ、あんまりいいアングルにならなかったけどね★
敗因は陣取った場所と用意してたカメラ(レンズ)と、カメラマンの腕とセンスがイマイチだったことですw


86号機ちゃんが飛び立つと、名残を惜しんだり感慨に浸るヒマもなく、次は87号機ちゃんの発艦準備。
86号機ちゃんはほぼ予定通りに1230に発艦していった。
87号機ちゃんの発艦よていは1250で、その間たった20分。
既出の通り、シャッターの支柱トラブルにより、その場回頭を余儀なくされた87号機ちゃんは、格納庫内で斜めになっていて、これはこれでちょっとレアなショットだったんじゃないだろうか?
8人で動かすハズが、それよりもっと多くの人に押され&曳かれて着艦標識に移動させられるカラスちゃん。
その姿に「きっとみんな名残を惜しんで移動のお手伝いをしているんだろうなぁ。できることなら私もあの中に加わりたいわ」なんて思っていたのですが、きっと他の見学者たちも同じ気持ちだったんだろうなぁ。


しかし、87号機ちゃんのスタンバイは早かった。
86号機ちゃんの時の半分もかかってないんじゃないかと思うくらいの手際のよさで、さくさくと準備が進み、ちょっとあっけないくらいに準備完了。
ほぼ予定通りの時間に発艦!
86号機ちゃんのときと同様、尻尾の下がった状態で飛び上がると・・・こちらはさっさと飛び去ってしまった・・・★


なんだよ〜。期待してたのに、これだけかよ!


と思ったのも私だけではないハズだ。
86号機ちゃんと87号機ちゃんが、揃ってしらせちゃんのまわりを飛び回り、名残を惜しむかのようにねちこくローパスで楽しませてくれると思い込んでたのに、揃って飛んでる姿は、私ら、見れないのかよ!
と、ちょっと泣きたいような怒り出したいような複雑な気分にさせていただきました★


まぁそれでも、念願だったカラスちゃんのナマ発艦・・・しかもおそらく最後の・・・を間近で見ることができて本当によかったです。
無事に飛んでいってくれたってことは、おそらく、無事に館山基地に帰り着いて、基地でみんなから祝福を受けてるんだろうし・・・基地には破壊・・・もとい、カメラを持った工作員を複数配備してあるw
揃って飛んでるショットはヤツらに任せればよいw


そして艦上に残された私たち。
乗員さんたちはまた我らパンピーが自由に動き回ることができるように、倒してあったフェンスを戻したり、チェーンを留めるために作りつけられてる半球状の窪み(に軸が通ってる)のフタをしたりと、作業に勤しんでいる。
こちらもまた、名残を惜しんでる余裕はないんだなぁって感じ。
それらを眺めつつ、私は携帯で必死に、館山基地に配備した偵察班(w)に連絡を入れていたのでありました。



さてさて。
せっかくカラスちゃんが飛び立っていったけど、まだフネは横須賀港に入ってはいません。
まだこの後にもいろいろあったので、長く&細切れになってすみませんですが、続きはまた改めてご報告いたしますです。